ヤングケアラーへの具体的な支援について

令和3年第1回定例会3月議会(3月3日(水)) 質問1項目め

○議員(丸谷聡子)

丸谷聡子です。発言通告に従い、3項目質問いたします。

1項目めは、ヤングケアラーへの具体的な支援についてです。

私は3年前、国際基督教大学ジェンダー研究センターの松崎実穂先生から、自治体における調査から見えるケアを担う子供たちについてのお話をお聞きし、初めてヤングケアラーという言葉を知りました。松崎先生から、ヤングケアラーとは、大人が担うような家族のケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面でのサポートなどを行っている子供や若者のことで、一番の課題は当事者である子供がヤングケアラーであることに気づかず、将来の夢を諦めて成人し、その後の人生に大きな影響を与えるところにあると教えていただき、私は大変驚きました。なぜ私が驚いたかというと、私の子供時代に遡るのですが、5歳のときに父が病死し、生まれたばかりの妹と私を1人で育ててくれた母は、過労から体を壊し、精神的に不安定になったり、入院したりで、妹と2人だけで暮らすこともありました。そして、将来なりたい職業や進学を諦めた経験もあったからです。それが40年の時を経て、私自身が実はヤングケアラーの1人であったということを初めて知り、大変驚いたのです。最近では、ヤングケアラーの様々な問題がメディアでも取り上げられるようになりました。今年度、初めて厚生労働省は文部科学省と協力をして、全国的な実態調査を行い、今年度中に支援策を検討する方針が出されています。本市におきましても、令和2年度明石市給付型奨学金、あかしこども夢応援プロジェクト事業の申込者のうち、11名が保護者の看護・介護等が必要を理由にあげており、これは中学3年生だけですから、かなりの数のヤングケアラーがいることが推察されます。先ほど、私の経験を申し上げたように、ヤングケアラーの一番の課題は、当事者が気づかないために声が上げられないことです。早急に実態を把握し、適切な支援策が必要であると考えることから、以下の5点について質問をいたします。

1点目、実態把握について。私は、平成30年6月議会において、地域総合支援センターでのヤングケアラーの対応について質問をいたしました。その際、中核市に移行すれば、ヤングケアラーについても把握できるので、適切な対応をしていきたいとの答弁がありました。その後、どのように対応されてきたのでしょうか。また、適切な支援をしていくためには、市独自の調査を行い、正確な実態把握をすべきと考えますが、見解を問います。

2点目、日常の見守りについて。ヤングケアラーの課題解決のためには、日頃から子供たちの様子を見守り、いち早く異変に気づくことが重要です。まずは子供たちの一番身近にいる先生方に理解を深めていただくための研修、日頃から子供たちの見守りを目的としたスクールソーシャルワーカーや担任を持たない教員の増員、また地域への啓発等が必要であると考えますが、見解を問います。

3点目、相談体制について。日常の見守りから気づいた子供を支援につなげるためには、ヤングケアラーの相談窓口を明確にする必要があります。特に大切なことは、子供の気持ちを十分尊重した上で、専門的なスキルを持った相談員が適切な支援に確実につなげていく体制が必要であると考えますが、見解を問います。

4点目、支援については、電話やLINEなどで気軽に相談できる仕組みづくり、ヘルパー派遣などの福祉サービスの提供、進路などの情報提供、当事者同士の交流の場の設置、情報共有できるサイトの開設など、積極的に行うべきと考えますが、見解を問います。

5点目、条例の制定について。この課題は、どこかの部署だけで担当するのではなく、市全体の横断的な取組が必要です。そのことを明確にするためにも、埼玉県のようにヤングケアラー条例を制定する、もしくは明石市こども総合支援条例の改正を行い、ヤングケアラーへの支援を明記すべきと考えますが、見解を問います。

○理事(福祉・こども担当)・福祉局長(佐野洋子)

理事兼福祉局長でございます。

御質問第1項目めの、ヤングケアラーへの具体的な支援について、1点目と3点目から5点目について、併せてお答えをいたします。

ヤングケアラーにつきましては、本来、大人が担うとされている家事や家族の世話などを、子供や若者が担うことによって、子供が学校に行けない、友達と遊ぶ時間がないといった状況により、健やかな成長を阻害されるほか、将来の自己実現に影響を及ぼされるなどの問題があり、市として取り組むべき重要な課題であると認識をしております。現在、市においては、子供自身が通う学校のほか、気づきの支援拠点であるこども食堂、地域においては、民生児童委員や様々な福祉の相談事を受け付けることができる地域総合支援センター等におきまして、それぞれの機能を生かし、要支援家庭を把握できるよう努めております。そのような中、支援が必要な児童であると明石こどもセンターに相談が寄せられ、関係機関との連携の下、具体的な支援に至った事例もあり、要支援家庭には少なからずヤングケアラーの問題があることを改めて認識しているところでございます。しかしながら、子供の貧困問題と同様に、子供自身が自らの生活や家族の世話を当たり前のこととして捉えてしまうことや、家族の病気などを言いにくいといったことから、子供からSOSの声を上げにくく、実態が表面化しにくいことが大きな課題であります。さらには、ヤングケアラーの課題がある家庭は、経済的困窮や介護、疾病など、複合的な課題がありながらも支援がなく孤立していることが多いことから、早急な解決が困難な場合があり、ケアを必要とする保護者やケアを行う子供といった、それぞれを支援するような個別ケアだけではなく、家族全体をトータルでサポートする支援の在り方が求められております。

以上の課題から、ヤングケアラーの支援については、第1に、見えにくい課題に周囲の大人が気がつくこと。次に、発見して課題だけを表面化してしまい、かえって子供を苦しませることにならないよう、子供に寄り添ってアウトリーチによる状況把握を行い、しっかりと対応できる機関につなぐ仕組みをつくること。そして、組織横断的に総合的な支援を継続的に行うことが必要だと考えております。そのために、市では、まずヤングケアラーについての理解を促進し、子供の何げない言動や登校状況等の変化から、支援の必要性を見出すことができるよう、教育現場や地域の関係者に広く周知啓発することや、研修等を積極的に行ってまいりたいと考えております。

現在、政府においても、本年3月末に決定が予定されている子供・若者育成支援推進大綱において、ヤングケアラーの支援について検討が進められており、また、厚生労働省においても、対策を検討するプロジェクトチームを文部科学省も加わって発足させることとしております。市におきましても、総合的な支援が求められることから、福祉局の地域共生社会室が中心となり、福祉部門をはじめ、教育部門、精神保健部門、人権推進部門、こどもセンター等の庁内関係部署や、学校、スクールソーシャルワーカー、こども財団、地域総合支援センター等の支援者が共通認識を図るとともに、組織横断的に様々な検討を行うことができる会議体を設置し、取り組んでまいります。その中で、具体的な支援策や相談の窓口、子供からSOSを出せる環境づくりなど、それぞれの機関が持つ専門性を有機的につなぎ、家族全体を支援する仕組みづくりについての検討を行いたいと考えております。条例につきましては、市のこども総合支援条例において、すべての子供に対し、その状況に応じた適切な支援を行うことと明記しているところではございますが、本条例の改正も含め、今後、研究してまいります。

何よりも関係部署が連携して総合的な支援をしていくことは、ヤングケアラーの課題解決のみならず、様々な状況にある子供と家族の支援とともに、安心して暮らし続けることのできるまちづくりにつながるものと考え、積極的に推進をしてまいります。よろしく御理解賜りますようお願いいたします。

○教育局長(北條英幸)

教育局長でございます。

私のほうからは、質問1項目めの2点目、日常の見守りについてお答えいたします。

本市では、すべての人にやさしいまちづくりを基本理念に、明石の子供たちに対し、誰一人として取り残さない取組を進めているところでございます。しかしながら、ヤングケアラーとして権利を侵害されている可能性がある子供が存在することも報告されております。そのような現状におきまして、子供が多くの時間を過ごす学校では、子供の様子をよく把握することができます。学校に行けていない、遅刻が多い、宿題ができていないなど、子供が本来やるべきこと、やれていなくてはいけないことができていないというサインを分かりやすく確認することができます。そのため、いじめや虐待をはじめ、あらゆる観点において、教員の気づきの力を高めることが非常に大事になります。したがいまして、学校はヤングケアラーである可能性に気づきやすい場所であり、教職員がヤングケアラーの視点を持つことで、心配な子供を把握することができると考えております。これらのことを踏まえ、校長会や教頭会をはじめ、生徒指導担当者会、不登校担当者会、スクールソーシャルワーカー協議会など、あらゆる機会を通じてヤングケアラーの認識を広め、教職員の気づきの力を高めて、ヤングケアラーの可能性のある子供を把握し、すぐに支援につなげることから行いたいと考えております。また、スクールソーシャルワーカーにつきましては、これまで計画的に増員を図り、現在は全中学校区に配置しているところでございます。さらに、日頃から教職員が子供との信頼関係を築き、何でも相談できる相談しやすい身近な大人になるよう指導してまいりたいと考えておりますので、よろしく御理解賜りますようお願いいたします。

○議員(丸谷聡子)

それでは、再質問をさせていただきます。1項目め、ヤングケアラーへの具体的な支援につきまして御答弁をお聞きをいたしまして、家族の丸ごと支援であるとか、課題だけ表面化して、かえって子供を苦しめることがないようにというような、大事なところの課題認識は、おおむね何か私と共通しているなというふうに思いました。また、組織横断的に検討を行う会議体を設置していただけて取り組むという前向きな御答弁も頂けたと思います。ですけれど、やっぱり的確な検討を行うためには、1点目に申し上げたように、正確な実態を把握する必要があると思うんですね。そういう意味では、市独自でそういう調査も行っていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○理事(福祉・こども担当)・福祉局長(佐野洋子)

理事兼福祉局長でございます。

ただいま国のほうでも、ヤングケアラーにつきましての調査がなされており、もう時期待たない状況で報告もなされるかというふうに存じております。そのような調査も踏まえまして、また市のほうでも、その実態をどういうふうに見るかといったところも、先ほど答弁しましたような会議体で教育部門とも協議しながら進めてまいりたいというふうに考えております。

○議員(丸谷聡子)

国で足りないところを、ぜひ市独自で進めていただきたいと思います。

時間があまりありませんので、すみません、ダイレクトに市長にお聞きしたいんですけれども。例えば今、学校の現場でも担任を持たれている先生って、なかなか余裕ない状態もあったり、尼崎の事例を見させていただいたら、スクールソーシャルワーカーさんが廊下に貼ってある絵を見ただけで、子供の心の変化とか課題に気づかれたりしていますので、そういった専門家が学校の現場にも必要ではないかなと思います。それから、私自身のずっと昔のことを振り返って、どんな支援があればよかったかなと考えたら、やっぱり同じような境遇の友達がいたら、どんなに心強かったかなというのもありますので、ぜひ、そういう当事者同士の交流の場であるとか、それからまた今、イギリスの事例なんかもちょっと見てるんですけれども、安心して話せる相手と、安心して話せる場所をつくるとか、それから外出イベントを実施するとか、グループセッションとか、アセスメントシートの活用なんかで、成功事例が報告されています。ぜひとも明石市から、親やきょうだいの面倒を見ることは、自分の運命だから仕方ないと受け入れてしまっている子供たちに、そうじゃないと、あなたの未来は広がって輝いているよ、明石市は応援するというようなメッセージを、しっかり子供たちに発信をして支援をしていただきたいんですけれども、市長のお考えをお聞かせいただけますでしょうか。

○市長(泉 房穂)

今、いわゆるヤングケアラーと、特に最近言われている問題でありますが、私としたら、昔からある問題です。これが改めて子供の虐待、子供の貧困と併せて、子供たちにまさにより厳しい状況になっているテーマだと認識しております。既に答弁申し上げておりますが、明石市挙げて、全庁挙げてやっていきたいと思いますので、まずもって関係部署が集まって情報を共有化し、課題を整理した上で、できることをしっかり順々やっていきたいと思います。

その際、繰り返しになりますが、このテーマは悩ましくて、例えば無戸籍のテーマだと、無戸籍の相談ダイヤルに連絡あって、ぼっと行って、無戸籍でも大丈夫とメッセージを伝えるだけでも意味あるんですね。ひきこもりについても、看板を掲げて、御本人や御家族から相談があれば、家庭訪問することによって一定程度対応は可能になるんです。ただ、このテーマは、子供自身が、じゃあ本当に電話かけてくるかというと、そもそも子供自身が自らの状況に気づいていなかったり、諦めていたり、例えばリアルな話ですけど、いわゆる親と2人で暮らしていて、暮らしている親が精神をかなり病んでいる状況で、その世話をしている子供もおられます。なかなか、そのことを人に言いにくいというテーマがあって、単に相談して終わりじゃなくて、相談なりで気づいた後に、実際、子供にとって必要な支援というのは、親支援であったり、寝たきりのおばあちゃんの支援なので、ちゃんと支援とつながらなきゃいけないという観点で、しっかりと気づきから支援につながる形を整理して、特に教育現場は重要ですから、教育現場のてこ入れも必要ですね。それこそスクールソーシャルワーカー、いわゆるヤングケアラー担当のスクールソーシャルワーカーの増員なども検討していきたいと思いますが、すみませんが、これから早急に全庁挙げて検討いたしますので、いましばらくお待ちください。しっかりやってまいります。

○議員(丸谷聡子)

市長から本当に心強い、そういった御答弁を頂きました。やっぱりおっしゃるとおりで、子供たちの本当に多様な支援が必要になってくるところだと思います。でも、信頼できる大人がいるよということの存在を示すということは、すごく大事だと思いますので、ぜひともよろしくお願いいたしたいと思います。