工場緑地面積率の緩和の議論が出ている明石市の緑の在り方について

令和2年第2回定例会12月議会(12月7日(月)) 質問1項目め

○議員(丸谷聡子)

丸谷聡子です。発言通告に従い、3項目質問いたします。

1項目めは、工場緑地面積率の緩和の議論が出ている明石市の緑の在り方についてです。

受益企業の声だけを聞いて安易に緩和するのではなく、市全体を俯瞰し、多面的で慎重な判断が必要であると考えることから、以下の5点について質問をいたします。

1点目は、明石市の特性を踏まえた緑の在り方について。本市は、今年7月、国からSDGs未来都市に選定されました。また、明石市第6次長期総合計画も、あかしSDGs推進計画として策定する方向で進められています。SDGsの目標達成には、経済、社会、環境の3つの側面のバランスが必要と言われていますが、そのバランスの前提条件は、持続可能な地球環境です。それがよく分かる図が、このストックホルム・レジリエンス・センターが出しているウエディングケーキモデルです。この図を見ると、私たち人間の社会と経済は地球環境という大きな柱に支えられていることが一目瞭然です。このモデルは、一番下は気候、淡水、海洋、生物多様性の4つ、すなわち地球環境そのものです。そして、この環境の部分が社会や経済を支える土台となっています。私たち人間は自然の恩恵を受けて進化を遂げてきました。文明が発達した現代社会においても、自然に支えられてこそ生活できているのは言わずもがなです。土台となる環境が一度破壊されてしまえば、人権だ、経済などと言っているどころではなくなってしまいます。つまり、安定した環境の枠を超えて、私たち人類の社会や経済は発展することはできないということです。そのことを私たちはよくよく肝に銘じておかなければなりません。

さらに、コロナを収束させた後の社会の在り方として、欧州連合等ではグリーン・リカバリー、緑の復興を主軸とした持続可能なまちづくり政策に向けての動きが始まっています。世界は、もうどんどん先に進んでいるということです。SDGs未来安心都市を目指す本市においても、成長の限界を問い直し、緑の回復を推進する施策展開が急務であることは明白です。このような世界の情勢と本市の取組を踏まえた上で、工場緑地面積率の緩和の議論も行わなければならないことを、まず初めに申し上げておきたいと思います。

さて、工場立地法は、その目的を工場立地が環境の保全を図りつつ適正に行われるようにする、国民経済の健全な発展と国民の福祉の向上に寄与することと規定しています。つまり、工場立地法による緑地等の整備は、単に公害に対する対策ではなく、周辺環境とのさらなる調和を目指したもので、より向上させる必要がある区域については、緑地面積を引き上げることも可能であることが規定されています。市域が狭く、工場地域と住宅地域が隣接しているという特性を持つ本市において、工場の緑地面積率を下げるということは、直接市民の生活環境、自然環境に影響するとても大きな問題です。そこで、まず1点目として、SDGs未来安心都市を目指す本市として、工場緑地の在り方についてどのように認識をしているのか、見解を問います。

2点目は、市民生活への影響や本市の環境施策との整合性についてお聞きします。もし緩和することになれば、地域環境、自然環境、気候変動など、様々な市民生活への影響が考えられます。また、緑地化するメリットとして挙げられるヒートアイランド現象や騒音の軽減、防じん効果などが失われることにもなりかねません。さらに、本市が策定している明石市の環境の保全及び創造に関する基本条例をはじめ、明石市環境基本計画、生物多様性あかし戦略、明石市地球温暖化対策実行計画の環境に関する計画との整合性が図られるのかも心配です。特に、本年3月に兵庫県下で初めて行った気候非常事態宣言は、2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを宣言しています。これは、既に策定している明石市地球温暖化対策実行計画の数値を大きく変更しないと実現できません。今や、気候変動は公害以上に深刻な課題と言えます。このような現状を踏まえ、市民生活への影響と本市の環境施策との整合性について見解を問います。

3点目、明石市工場緑地のあり方検討会について。本年3月の総務常任委員会で、(仮称)緑のあり方に関する検討会を設置して、住みよい地域環境を維持するため、幅広く議論を行うと報告されましたが、その後の状況はどのようになっているのでしょうか、市の見解を問います。

4点目は、市民参画や地域住民への意見聴取についてです。市民の皆さんから不安の声をお聞きしています。特に子育て世代からの声が多いです。企業の意見だけでなく、市民の意見、特に地域住民の意見をしっかり聞いていく必要があると思いますが、明石市市民参画条例を定めている本市として、どのように市民参画や地域住民の意見を聞いていくのか、見解を問います。

5点目は、緑のガイドライン策定や敷地外緑地制度等の導入についてです。市民や企業の緑地及び環境に関する意識が高まる中、質の高い緑地の確保は企業の成長にとっても不可欠です。堺市では、緑のガイドラインを策定したり、敷地外緑地制度を導入したりして、企業の成長と市民生活を守ることをバランスよく進められています。また、愛知県豊橋市では、特定の工業専用地域の緑地面積率を20%から15%に緩和するに当たって、緑地機能の代替措置として、地域の周辺環境と調和するよう取組を実行してもらい、その取組についての計画書を市へ提出することとしています。企業が、緑地を減少するに当たりボランティア活動や様々な活動への支援等を行い、産業振興と環境保全の調和を図るというものです。こういう考え方こそが、SDGsの経済、社会、環境のバランスを取るということだと思います。本市として企業の地域貢献や負担の在り方について見解を問います。

○政策局長(横田秀示)

政策局長でございます。

私からは、御質問の1項目め、明石市の緑の在り方につきまして、1点目から5点目まで順次お答えいたします。

1点目の、明石市の特性を踏まえた工場緑地の在り方についてでございますが、まず工場立地法につきましては、高度経済成長期における環境汚染や公害の発生を背景として、昭和48年に改正され、工場内外における快適な環境づくりや地域住民の不安の軽減のため、工場の新設等を行う際には、敷地内に緑地として20%以上を確保し、緑地を含む環境施設を25%以上確保することが定められております。その後、環境汚染防止技術の向上などにより、平成9年に法改正がなされて、地方自治体が独自に条例を制定することで、地域の実情に応じて緑地面積率を最大5%、環境施設面積率を10%まで緩和を行うことができるようになったところでございます。さらに、平成29年には、地域未来投資促進法が施行され、基本計画を策定し国の同意を得て条例を定めることで、緑地面積率及び環境施設面積率を最大1%まで緩和できるようになっております。これらのことは、工場立地法が定める緑地等の整備が、大気汚染防止法や水質汚濁防止法の排出排水基準等のようにナショナルミニマム、いわゆる社会全体として最低限守るべき基準ではなく、工場内外における快適な環境づくりによる、地域住民の心理的不安感の軽減を含めた周辺環境との調和を目的としていることから、地方自治体がその地域の実情に応じて緩和できることとされております。

こうした中、工場の緑地面積率等の緩和につきましては、これまでも商工会議所をはじめとする産業界から、製造設備や物流倉庫を建てたかったが場所がないため県外に建てざるを得なかったとの意見や、老朽化した建物を壊すには、先行して新たな建物を建てなければならないが、敷地がないため建てることができない。また、周辺自治体が緩和しており、市内企業の流出防止を図る必要があるといった御意見を多数頂いており、工場の緑地面積率等の緩和に向けた要望を受けているところでございます。加えて、このたび、本年11月30日付で明石商工会議所から本市市議会に対しまして、緑地面積率等の緩和に関する請願書が提出されたところでございます。一方で、本市は市域が狭く、人口が密集しており、町なかにある工場の緑地が減少することについては、騒音の防止や景観形成の観点などから、市民生活に与える影響を考慮いたしますと、基準の緩和には市民の十分な理解が不可欠であると認識しているところでございます。これらの様々な論点がある中で、経済や産業面だけではなく、環境面や市民生活への影響など、総合的に検討していく必要があることから、このたび、明石市工場緑地のあり方検討会を設置し、幅広く議論を賜りたいと考えております。

次に、2点目の、市民生活への影響や本市の施策との整合性についてでございますが、明石市環境基本計画及び生物多様性あかし戦略におきましては、水と緑でつなぐ命のネットワークづくりを目標としており、事業者の役割として、環境、生物多様性に配慮した事業展開の推進や、事業所内の緑化を推進することとしております。また、明石市地球温暖化対策実行計画におきましては、2030年度までに二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの削減について、2013年度比で26.5%を削減することを目標としております。この目標に対する市の具体的な取組としましては、産業部門において省エネ性能の高い設備や機器等の導入促進によって、削減目標値約48万トンのうち237トンを削減し、また、新たな森林の整備や都市の緑化の推進などによって29トンを削減することを計画に位置づけております。全会一致で採択頂いた気候非常事態宣言におきましては、2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロを目指しており、二酸化炭素排出量のさらなる削減が必要であると考えております。このように本市の環境施策を推進する中、工場緑地面積率を緩和し、緑地の一部が失われた場合、二酸化炭素の吸収量が低下する側面が懸念されますが、一方で生産施設等の建て替えが容易になることにより、最新のエネルギー効率の高い設備や建物への更新が促進されますと、トータルでは省エネ化をはじめ、二酸化炭素排出量の削減にも一定の効果が得られるところであり、総合的な観点で捉えますと、市の施策との整合性が図られる場合もあるという認識でございます。

次に、3点目の工場緑地のあり方検討会につきましてですが、検討会で議論頂くテーマとしましては、工場緑地面積率等の緩和の可否や、緩和する場合における対象地域、緩和の程度などとともに、緩和による代替措置として、工場と周辺の生活環境との調和に必要な方策について議論頂く予定としております。検討会の委員につきましては、学識経験者をはじめ、経済団体、環境団体、市民・地域代表など計10名で構成し、それぞれの立場において幅広い御意見を賜りたいと考えております。

次に、4点目の市民参画や地域住民への意見聴取についでてございますが、他市においては、市内部だけで検討を行っている例もございますが、本市においては市民の十分な理解が必要不可欠であるとの認識から、さきに述べましたように、市民参画手続の一環として検討会を設置いたします。また、検討会の委員につきましては、本来であれば公募委員を選任するところではありますが、当初、本年12月をめどに緑地面積率に関する方向づけを行う予定であったことを踏まえ、早急に検討を開始するため、本検討会のテーマに沿った他の審議会や行政委員会において市民公募で選ばれた方に委員として参画頂き、御意見を賜りたいと考えております。また、検討会での審議結果を踏まえ、速やかに市民参画手続であるパブリックコメントを実施し、市民参画の機会を設けてまいりたいと考えております。

最後に、5点目の緑のガイドライン策定や敷地外緑地制度等の導入についてでございますが、大阪府堺市では、工場の緑地面積率等を緩和するとともに、ガイドラインを制定し、緩和後においても単なる緑の面積だけではなく、緑の量や周囲から見える緑の美しさを求める質の高い工場緑地の形成を推進し、また、本来は工場敷地内に確保すべき緑地が確保できない場合においても、敷地外に緑地の整備を求める敷地外緑地制度を導入しております。その他の自治体におきましても、工場立地法による企業の社会的責任を求めるため、周辺環境との調和に必要な方策を、ガイドラインや条例などで位置づけている事例もございますので、検討会で議論を進めるに当たりましては、これらの他市の取組につきましても情報提供した上で、工場緑地の在り方について議論を賜りたいと考えておりますので、御理解賜りますようよろしくお願いいたします。

○議員(丸谷聡子)

それでは、再質問をさせていただきます。

1項目めの1点目です、工場立地法による緑地のほうの整備は、ナショナルミニマムではなく、周辺環境とのさらなる調和を目的としたものとの御答弁を頂いたと思います。例えば、ドイツでは、条例で一定面積以上の屋根には屋上緑化とか太陽光パネルを設置すると規定している市もありますし、今は様々な方法で緑化率を高めたり、環境負荷を低くしたりすることができるようになっています。今の時代だからこそ緑地率を下げるのではないという議論もあって、私はしかるべきだと思っています。これから市のほうでも検討を進めていかれるのだと思いますけど、緩和ありきの議論ではない、先ほど言われましたように、市民の十分な理解が得られるような、周辺環境の調和というところを大前提に進めていくということでいいでしょうか、確認させてください。

○政策局長(横田秀示)

政策局長でございます。

工場緑地の緩和に向けた検討につきましては、緩和について、産業面については一定の経済的な効果があると考えております。ただ、一方で環境面では今後、重要になってくるものと認識しておるところでございます。ですので、その辺、両方とも大事なテーマでございますので、審議会でそこはしっかりと御議論頂きたいというふうに考えている次第でございます。

以上です。

○議員(丸谷聡子)

2点目ですね、環境施策との整合性についてなんですけど、これ答弁ですごく大事な言葉が私は出たと思っています。総合的な観点で捉えると施策との整合性が図られる場合もあると認識しているというような御答弁だったというふうに私は認識しております。これは言い換えると、緑地面積率を緩和して建て替えたときに、エネルギー効率が高い設備や建物にしていただくことができなければ施策との整合性が図られないということですよね。これ環境部長にお聞きしたいんですけど、私は、市が進めている環境施策との整合性が図られないということが絶対にあってはならないと思っています。そこは市として、環境部局としてしっかり対応していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○環境部長(石角義行)

環境部長でございます。

温暖化対策実行計画と整合性が図られないことがあるのではないかという御質問だと存じます。先ほどの答弁では、可能性があるという意味での答弁でございましたが、そういうことがないように、最新のエネルギー効率の高い機器等の導入を促すような仕組みを検討してまいりたいと考えておりますので、御理解賜りますようお願いいたします。

○議員(丸谷聡子)

しっかりその辺やっていただきたいと思います。こんなときこその縦割り行政だと思いますので、環境部長、しっかり対応お願いしたいと思います。

3点目ですけれども、あり方検討会について、3月の委員会の報告では5回程度の開催というふうに言われていましたけど、それは変わってないということでいいでしょうか。

○政策局長(横田秀示)

政策局長でございます。

このたび設置いたします検討会につきましては、1月末をめどに3回程度予定いたしているところでございます。

○議員(丸谷聡子)

3回に減らすということになるんでしょうかね。私は回数ありきではない、緩和率についても、例えば、伊丹市は15%であったり、尼崎市は10%と、市によって様々ですから、まずは十分な情報を提供して、この検討会によってしっかり議論を尽くすということが大事だと思いますので、その回数ありきでないということを、強く意見として申し上げたいと思います。ぜひ市民の不利益にならない結論を導き出していただきたいということも申し添えます。

あと、本来、市民委員を入れるはずだったけど入れられなかったっていうことで、このテーマで公募をしてないわけですけど、それであればなおさら、市民参画というのはすごい大事だと思います。なので、4点目の市民参画とか住民への意見聴取ですけど、ただパブコメをするだけじゃなくって、ちゃんとパブコメをする前に市民への丁寧な説明の場も必要ですし、ともすれば市民アンケートなども必要ではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。

○政策局長(横田秀示)

政策局長でございます。

市民参画の手続としましては、市民参画条例にのっとりまして、審議会とパブリックコメントを実施していく予定でございます。

以上でございます。

○議員(丸谷聡子)

ぜひ、他市でもパブコメの前に、ちゃんと市民説明会をしたりとかしておりますので、そういうパブコメをきちっとしていただけるような情報提供をする場を、ぜひ考えていただきたいというふうに思います。

5点目の、こういうガイドラインとか敷地外緑地制度等の導入というのも例に挙げさせていただきましたけど、その後、豊橋市なんかでは環境活動計画書をしっかり出して、事業所内でのエコ通勤の実施であるとか、地域貢献として外来生物の駆除の作業をしたり、また環境ボランティアの支援とか、環境振興基金への寄附などを義務づけておられますので、こうした緑地機能の代替措置として、市民への配慮とか生物多様性とか、気候変動に対する社会的責任をお願いするということは、これからの社会において絶対に必要だと思いますので、ぜひその辺りも検討会でしっかり検討していただきたいと思います。